第63回北海道薬学大会 2016年5月14~15日

2016.5.14 研究発表

「糖尿病患者の 運動療法に関する実態調査 ~行動変容ステージを用いて~」

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日程:2016年5月14日・15日
場所:札幌コンベンションセンター
研究者:鈴木 実紀、浅野 逸郎、大野 伴和、
    刀禰谷 雅之、福原 章訓、松本 健春


背景

まつもと薬局では、1年に1回、ノルディクウォーキングのイベントを開催しております。

1)

  • 1)第61回 北海道薬学大会(余西、2014)

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ノルディックウォーキングとは、ポールを使いウォーキングをすることで、通常のウォーキングと比べて全身の筋肉を刺激するため、より効率よく運動ができます。
フィットネスウォーキングインストラクターの資格を持つ鞘野さんを招いてポールの使い方や歩き方のコツなどの説明をうけます。

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こちらは実際のノルディクウォーキングの様子です。
職員も一緒に参加し、運動の楽しさを知ってもらい運動を始めるきっかけ作りをしたり、運動仲間を見つけ運動を続ける手助けをできるよう心がけております。
また、その他に門前の病院に勤務している看護師さんの協力もいただき、他職種合同で行っているイベントとなっております。

 しかしながら、このようなウォーキングイベントは行っているものの、普段の薬局業務での運動療法に関する聞き取りは不十分であるように感じており、糖尿病患者の運動療法に対する意識や現在の取り組み状況を把握するために、今回の聞き取り調査を行いました。

方法(調査項目)

【対  象】

2016年1月15日~3月31日の間に、
まつもと薬局(本店、自由が丘店、西6条店)に来局された糖尿病治療薬が処方されている患者。

【患者背景】

症例数: 506例
年 齢 : 20~91歳 (中央値:63歳)
性 別 : 男性314名 女性192名

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アンケート調査は、ジョンソンエンドジョンソンで発行している
「糖尿病ハンドブック運動療法のコツ」という冊子を用いて行った。

Q1:運動療法に関する指導の有無

Q2:運動療法に対する行動変容ステージ

運動に無関心な【前熟考期、熟考期、準備期】の患者に対して

Q3:運動をしない理由

Q4:行うことができそうな運動

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運動に関心はあるが実行には至らない【行動期、維持期】の患者に対して

Q5:行っている運動 に関して聞き取りを行った。

結果

結果Q1:「運動療法に関する指導」

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運動療法について指導を受けたことがない人が半数以上いた。

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誰から説明を受けたのかを聞き取った。
医師が半数以上占めたが、看護師などのコメディカルスタッフの回答もあった。(複数回答あり)

結果Q2:「行動変容ステージ」

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運動に無関心な前熟考期に属する患者が54名、
運動に関心はある熟考期が194名
運動が長続きしない準備期が92名
現在運動をしている行動期が49名
1年以上続けている維持期が117名となりました。
現在運動を行っていない前熟考期から準備期の患者が340名と半数以上を占める結果でした。


結果Q3「運動をしない理由」

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前熟考期・塾考期・準備期に該当する患者 340名に対して運動をしない理由を聞き取りを行った結果。
時間がないという患者が89名。
寒さや積雪ためできない患者が82名。
足腰の障害や心臓病など体の不調と答えたのが77名と、多くみられました。
次いで、面倒・やる気が出ない・運動が嫌いだから、という回答が38名。
何となくできていないだけという患者が21名。
仕事が運動になると考えている患者が20名いました。
その他、年齢、施設に入居中、読書が好き、性格上の問題、
運動療法について特にと言われていないという回答もありました。


Q4「行う事ができそうな運動」

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前熟考期・塾考期・準備期に該当する患者 340名に対して行う事ができそうな運動はあるか尋ねたところ
229人から回答を得ることができました。
ウォーキングとの回答が最も多く、129名と半数以上の患者から挙げられました。
次いで、筋力トレーニング、階段昇降、ストレッチなどの家でできる運動と回答した人が80名いました。
その他、自転車やジョギング、ヨガ、庭いじりや山での山菜摘み、水泳、パークゴルフなどが回答がありました。


結果Q5「行っている運動」

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現在運動を行っている行動期、維持期の患者166人に対して行っている運動について聞き取りを行った結果です。
ウォーキング、散歩との回答が最も多く、112名でした。
次いで、運動器具を使った運動やジムでの運動が19名。
ゴルフやパークゴルフが15名。
筋力トレーニングが8名。
自転車が3名。
その他の回答として、歩くスキーやクロスカントリーといった冬ならではの運動や、夏場の渓流釣りや登山、ボーリング、ダンスなど趣味の一環としての運動などもありました。

まとめ/考察

  • 運動療法の指導を受けたことがない患者は半数を超えており、指導が十分ではない。
  • 行動変容ステージは熟考期に属する患者が最も多く、運動療法は十分実施されていない。
  • 運動できていない理由として、時間がない、寒さ/積雪、体の不調を挙げる患者が多かった。
  • 特に冬場の運動についてアプローチが必要と考えられる。
  • 前熟考期~準備期の患者の約2/3で、薬剤師による運動療法の説明に対して前向きな回答が得られた。
  • 行えそうな運動、現在行っている運動、いずれもウォーキングと回答した患者が最も多かった。
    ウォーキングは取り入れやすく続けやすい運動と考えられる。