第44回 糖尿病患者講習会

2016.7. 1 研究発表

薬剤師さんと話してみよう!

日 程:2016年6月27日
場 所:横山内科クリニック ステノYホール
研究者 :刀禰谷雅之


本日の流れ

  1. 自己紹介
  2. 糖尿病の由来・インスリンの発見
  3. 糖尿病治療の基本
  4. 運動療法に関するアンケート調査から

自己紹介

池田ワイン城の写真

池田ワイン、ブドウ、樽の写真

※池田町HPより引用

刀禰谷先生趣味釣り

日本糖尿病療養指導士 「CDEJ」のバッチ

糖尿病の由来とインスリンの発見

糖尿病の由来

今から約2000年前のギリシア時代に、飲んでも飲んでもそれ以上に尿が出ていき、しまいには干からびて死んでいくという病態の観察から、サイフォンを意味するギリシア語のディアベテス(Diabetes)という病名が用いられ、18世紀に尿に甘みのあることを見いだし、「甘い」を意味するメリトゥス(Mellitus)という形容詞がつけられ、Diabetes Mellitusとなって今日にいたっています。
 中国では、これより先、8世紀にすでに口渇(こうかつ)、多尿(たにょう)に加え、尿に甘みのあることの記載があり、「消渇(しょうかつ)」と呼ばれていました。
 日本では、10世紀から中国医書の翻訳でこの病気は知られており、明治初期には、Diabetes Mellitusを「蜜尿病(みつにょうびょう)、甘血(かんけつ)、糖血病(とうけつびょう)、糖尿病、葡萄糖尿(ぶどうとうにょう)」などと訳し、大正時代になって「糖尿病」と統一されました。

糖尿病 "diabetes  mellitus"

紀元前1550年前 古代エジプトに最古の文献
「尿があまりにもたくさん出る病気」

17世紀   英国

糖尿病患者の尿が甘いことに気付く⇒尿糖の発見
その後ラテン語の蜂蜜を意味する"mellitus"をこの疾患に付しました

日本において

江戸中期の医学書
「胃が乾燥し、いくら水を飲んでも渇きが止まらず、いくら食べても飢餓が続く。
尿は甘みがある。・・・・・
 藤原 道長

明確な記録としては・・・
 明治天皇

インスリンは1921年にバンティングとベストによって発見されました。

すい臓を全摘した犬、マージョリーに、すい臓からの抽出物を注射すると血糖値が2時間で50%下がることが確認されました。
マージョリーはその後90日間、生存しました ※ マージョリーの名前は「№33」

  インスリンの命名

下向きの矢印のサムネイル画像

膵臓のランゲルハンス島から分泌される

下向きの矢印のサムネイル画像

"島"ラテン語インスーラ"innsura"

  インスリンと命名

糖尿病治療の基本...「運動療法・食事療法・薬物療法」


糖尿病治療の基本のイメージイラスト

病態に合わせた経口血糖降下薬の選択の図

※「糖尿病治療ガイドブック」より引用


薬剤師がおこなう糖尿病療養指導

~運動療法に対するアンケート調査結果から~


方法(調査項目)

Q1:運動療法に関する指導の有無

Q2:運動療法に対する行動変容ステージ

前熟考期、熟考期、準備期の患者に対して

運動療法のコツの表紙(ジョンソンエンドジョンソン)

 Q3:運動をしない理由
 Q4:行うことができそうな運動

行動期、維持期の患者に対して
 Q5:行っている運動

 に関して聞き取りを行った。


「糖尿病ハンドブック・運動療法のコツ」
(ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社)

運動療法のこつより、あなたの運動習慣の段階は?

方法(調査項目)

Q1:運動療法に関する指導の有無

Q2:運動療法に対する行動変容ステージ

前熟考期、熟考期、準備期の患者に対して

 Q3:運動をしない理由
 Q4:行うことができそうな運動

行動期、維持期の患者に対して
 Q5:行っている運動

に関して聞き取りを行った。

行動変容ステージとは、こちらに示した5段階に分けられ、運動に対する取り組み状況を表します。 運動に無関心な前熟考期、運動に関心はあるが実行には至らない熟考期、運動はしたことはあるが長続きしない準備期、現在運動をしている行動期、運動を1年以上続けている維持期に分けられます。 前熟考期から準備期に該当する現在運動をしていない患者に対しては、3つ目として、運動をしない理由について4つ目として、行うことができそうな運動についてを聞きとりを行いました。 行動期、維持期に該当する現在運動をしている患者に対しては、5つ目として、実際に行っている運動についてを聞き取りを行いました。


対象・患者背景

【対象】
2016年1月15日〜3月31日の間にまつもと薬局(本店、自由が丘店、西6条店)に来局された糖尿病治療薬が処方されている患者。

【患者背景】
症例数: 506例
年 齢 : 20~91歳 (中央値:63歳)
性 別 : 男性314名 女性192名


結果Q1:運動療法に関する指導

結果Q1運動療法に関する指導の図


結果Q2:行動変容ステージ

結果Q2行動変容ステージのグラフ


結果Q3:運動をしない理由

結果Q3運動をしない理由のグラフ

前熟考期~準備期の患者340人から運動をしない理由を聞き取った。
時間がない、寒さ/積雪、体の不調という理由で運動できていない人が多い
(複数回答あり)


結果Q4:行うことができそうな運動

行うことができそうな運動結果のグラフ

前熟考期~準備期の患者340人中 229人から回答を得た。ウォーキングの回答が最も多かった。(複数回答あり)


結果Q5:行っている運動

行っている運動の結果のグラフ

行動期、維持期の患者166人から行っている運動を聞き取った。

ウォーキング/散歩をしている人が最も多かった。(複数回答あり)

まとめ/考察

  • 運動療法の指導を受けたことがない患者は半数を超えており、指導が十分ではない。
  • 行動変容ステージは熟考期に属する患者が最も多く、運動療法は十分実施されていない。
  • 運動できていない理由として、時間がない、寒さ/積雪、体の不調を挙げる患者が多かった。特に冬場の運動についてアプローチが必要と考えられる。
  • 前熟考期~準備期の患者の約2/3で、薬剤師による運動療法の説明に対して前向きな回答が得られた。
  • 行えそうな運動、現在行っている運動、いずれもウォーキングと回答した患者が最も多かった。ウォーキングは取り入れやすく続けやすい運動と考えられる。


まつもと薬局がおこなう運動療法イベント


~ノルディックウォーキンク体験会~

ノルディックウォーキングのフライヤー


≪ノルディックウォーキングとは≫

ノルディックウォーキングは、約80年前にクロスカントリースキーチームの夏場のトレーニングとしてフィンランドで始まりました。
ノルディックウォーキングは、ポールを使うことで全身の筋肉をたくさん刺激するので、普通のウォーキングよりエネルギー消費量が約20%も増加します。
つまり、体力づくり、スタミナアップ、減量などにとても効果的です。
また、上半身もしっかり使うので、肩や首のコリの解消、肩甲骨の可動域の改善にも有効です。

ノルディックウォーキングが各部位に与える効果のイラスト

緑➀.jpg ポールを強く地面に突くことで、上腕裏側や肩回りの筋肉に効く!

ピンク②.jpg ポールを持つことで背筋が伸び、お腹や背中の筋肉に効く!

名称未設定-1.jpg ポールの推進力で歩幅が大きくなり、太腿前後やスネの筋肉に効く!

水色④.jpg ポールの推進力で地面を強く蹴るので、太腿裏側やふくらはぎの筋肉に効く!


◎上半身も使った全身運動ノルディックウォーキングのイメージ

首から肩にかけてのコリを解消

ポールを使ってより安全に負担も軽減

老若男女誰でもカンタンにできる


糖尿病の運動療法の基本的なことはここにあります。

運動をするためには、エネルギーが必要です。
つまり筋肉を働かせるための燃料として、血液中のブドウ糖(血糖)が必要となるのです。
したがって、運動すると、血液中の余ったブドウ糖が筋肉の細胞内に取り込まれて、この結果血糖値の下降をきたすのです。


運動療法の効果とは?

運動の刺激とインスリンのイメージブドウ糖が、筋肉などの細胞の膜を通過して、細胞の中にはいるためには、ある種のタンパク質(GLUT4)が必要です。
健常者では、食事によって血糖値が上がると、それに見合ったインスリンが膵臓から分泌されます。このインスリンが、細胞にあるインスリン受容体と結合すると、ブドウ糖を細胞内に取り込む命令が出されます。この命令を受けて、細胞内部にあるGLUT4が細胞の表面に出てきて、血液中のブドウ糖を細胞内に取り込んでいるのです


しかし、糖尿病の状態では、インスリンの働きが悪いため、インスリン受容体を介した命令がうまく伝わらず、このGLUT4が細胞の表面に出てこられません。しかし、運動をすると筋肉の収縮そのものが刺激となって、インスリンの働きが多少悪くても(インスリン受容体からの命令を介さずとも)、細胞の表面に出てくるGLUT4の数が増えてきます。また、運動を続けるうちに、細胞の中にあるGLUT4の総量も増えてきますので、血糖の取り込みが多くなるわけです。


どのような運動をどの位?

運動の種類は、動的で全身を使う有酸素運動(早足、ジョギング、水泳、サイクリングなど)! : 糖尿病の運動療法の主な目的は、低下しているインスリンの効き目を良くすることにあります。運動によりインスリンの働きが良くなる部位は、運動した部分の筋肉に限られます。したがって、できるだけ多くの部位を動かすような全身運動がお勧めです。しかも、ブドウ糖を燃料としてエネルギーに変え、同時に脂肪まで燃やそうとしたら、十分酸素が必要です。酸素をあまり吸い込まない短距離走や瞬発的な動きではなく、ゆっくりと酸素を吸い込みながら全身を使うジョギングや歩行、水泳などが良いでしょう。 

運動量は、1日平均150キロカロリー(1週間あたり1050キロカロリー)を目標に!


★運動療法の注意点

(1)血糖値は食後1時間から1時間半位でピークに達します。食後1時間くらいに運動を開始すると、高くなる血糖を抑えられます。糖を利用する仕組みのイラストのサムネイル画像


(2)糖に対する運動療法の効果は、およそ48時間位持続するといわれています。1日おき、あるいは週3回などから始めてみるのも良いでしょう。(20分持続する運動)


(3)血糖コントロールが極端に悪い場合(血糖250mg/dl以上または尿中ケトン体が陽性のとき)、高血圧(最高血圧180mmHg以上)、眼底出血がある場合、腎臓機能の低下がある場合など、運動により急性の合併症を起こすことがあり、運動療法を禁止したり制限した方がよい場合があります。運動療法開始前には、主治医と良く相談することが大切です。



まつもと薬局ノルディックウォーキングの説明

フィットネスウォーキングインストラクターの資格を持つ鞘野さんを招いて指導していただいております。
こちらの写真が実際に指導している様子で、患者さんはポールの使い方や歩き方のコツなどの説明をうけます。

まつもと薬局ノルディックウォーキング

こちらは実際のノルディクウォーキングの様子です。

職員も一緒に参加し、運動の楽しさを知ってもらい運動を始めるきっかけ作りをしたり、運動仲間を見つけ運動を続ける手助けをできるよう心がけております。

また、その他に門前の病院に勤務している看護師さんの協力もいただき、他職種合同で行っているイベントとなっております。

最後に

私たちまつもと薬局では、皆様の糖尿病への治療参画に対して安心して自己管理ができるように指導させて頂いています。
日頃、皆様から勉強させて頂いた事を十分に発揮できるような育成にも取り組んでいます。これからも、よろしくお願いいたします。

ご清聴ありがとうございました。