低たんぱくパン誕生秘話

2019.3.19 開発秘話

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低たんぱくパン開発担当の、管理栄養士大西です。

あれは、2017年春のこと。
毎年恒例の、腎臓病料理講習会で作るサンドイッチ用に、低たんぱくでも美味しいパンがあったら・・・と思い上司に提案したところ、賛成と2ヵ月の期限をもらい、オリジナルパンを開発する事になりました。
参加者の方が自宅でも作れるように、炊飯器で焼ける、低たんぱくでもふわっともちっとしたパン。
そんなパンを目指して、生地の配合を考え焼き方を工夫しながら、毎日ひたすら試作品を焼き続けました。
何とか講習会に間に合い、もちろん出来上がりに自信はあるけれど、ちょっと不安でドキドキ。
結果、参加者の方には、「とても美味しい!」と喜んでいただき、嬉しく思いましたが、続いて「ぜひ商品化してほしい。」とのたくさんの声が。
私はその声にお応えしようと、パンの商品化に向けて歩みだしたのです。

最初は、パンのレシピを商品向けに改良して製造メーカーに発注する計画でしたが、低たんぱくパンを製造できる設備のある業者が見つからなかったため、これはもう自分たちで作るしかないと決心。
合わせて、ホームメイド用のミックス粉も開発する事になりました。
さあ、レシピ改良は管理栄養士の腕の見せどころ!と思っていたのですが、始めてみるとそれ以前に、予想もしなかった未知の仕事が次から次へと舞い込み、とても大変でした(泣)

様々な申請や手続きのための書類作りと、お役所通いに追われる日々。
日本中から原料の粉を探して、それを手に入れるためのメーカーとの交渉。
粉の配合を決めるために、取り寄せた膨大なサンプルを使って膨大な組み合わせの研究。
炊飯器内の温度を調べるための測定器を探して、手にするまで1ヵ月。
( 商品を開発するという事は、こんなに大変な事なのか・・・ )と、管理栄養士としての力がまったく通用しない現実に、心が折れそうになる日々でした。
そしていよいよ試作に取りかかるため、様々な種類の炊飯器を爆買い。
薬局の調理室にずらーーーり炊飯器が並んでいるのを見た薬剤師さんは、「いったい何事!?」とびっくり仰天(笑)
しかし、試行錯誤を繰り返し焼いても焼いても満足のいく出来上がりにならず、試作回数は1000回を超えました。
その1000回分、いつもパクパク試食を引き受けてくれたのは、上司や会社の仲間たち。
皆からの役に立つアドバイスや、励ましの言葉のおかげで、私は頑張る力をもらえましたが、試食のたびにだんだんみんながふくよかになって来たように見えたのが、私の気のせいじゃなかったらごめんなさい(笑)

気がつけば、開発当初には想像もしなかった、2年半という月日が過ぎていました。
腎臓病の方でも美味しいパンが食べられるように、また、自宅でも焼きたてのパンの香りと風味を楽しんでほしいという思いで完成した、低たんぱくパンとミックス粉。
それがやっと形になり、喜びとともにホッとした気持ちです。
しかし!ここがゴールではなく、これからこのパンを、一人でも多くの方に知ってもらいお届けするという、新たな使命が私にはあります。
腎臓病の皆様のお力になれるよう、私はこれからも歩み続けて行きたいと思います。