第64回 北海道薬学大会 2017年5月20日~21日

2017.5.20 研究発表

「DPP-4阻害薬の週1製剤を服用する患者からの聞き取り調査報告」

刀禰谷先生研究発表写真のサムネイル画像

日程:2017年5月20日・21日

場所:札幌コンベンションセンター

研究者 :刀禰谷 雅之(まつもと薬局自由が丘店) 

はじめに

  • 1921年のインスリンの発見から糖尿病治療が開始され、SU剤とインスリンでの治療から近年ではインクレチン製剤、DPP-4阻害薬、SGLT-2阻害薬と治療の選択肢が拡大された。
  • 治療薬の第一選択薬であるビグアナイド薬の位置づけを上回る勢いのDPP-4阻害薬の使用がある。

目的に至るまでの経緯

週1製剤DPP-4阻害薬トレラグリプチンの長期投薬が開始(2016年6月)

        赤下矢印のサムネイル画像

  • 1週間の血漿中濃度とDPP-4阻害率から考えて血糖管理への不安
  • 十勝型と呼ばれる糖尿病に対しての効果
  • 服用日の違いによる血糖への影響

トレラグリプチンの効果のグラフ

目 的

週1製剤DPP-4阻害薬トレラグリプチンを服用する患者に対し、アドヒアランス、HbA1cの変化、行動変容の推移について聞き取り調査をおこなったので報告する。

対 象

  • 2型糖尿病患者 115名   男83名 女32名

  • 年 齢   59.9±11.3歳  22~88歳

  • 体 重   68.5±12.5kg 43.9~100.5kg

  • BMI    24.8±3.3kg/㎡ 17.8~34kg/㎡

  • HbA1c   6.6±0.7%   5.1~10.1%

  • 併用薬剤  なし28名  あり87名 

方 法

  • 聞き取り調査
  • 服薬指導カウンター
  • トレラグリプチン処方の2回目の来局時

結 果

(聞き取り調査項目)

Q1: 週1回だけ飲む薬をどう思いますか?
Q2: 今日までの服用で、のみ忘れはありましたか?
Q3: 週1回の薬が処方された後での、生活習慣の変化について聞かせてください。
   (行動変容ステージ)

Q1: 週1回だけ飲む薬をどう思いますか?

週1回だけ飲む薬をどう思いますかの答えのグラフ


Q2: 服用で、のみ忘れはありましたか?

服用で、のみ忘れはありましたかの回答服用のグラフ



週1製剤の服用日のグラフ


トレラグリプチンが中止となった服用日
トレラグリプチンが中止となった服用日のグラフ

《変更理由》

  • 飲み忘れがある
  • 他にも薬を服用しているので面倒である
  • 数値が上がってきた
  • 運動するようになったら食欲が出て食べた
  • 中性脂肪が上がってきた
  • 毎日の服用が安心なので
  • 副作用(皮膚炎?)の疑い
  • 数値が改善し薬物中止


    Q3:生活習慣の変化について聞かせてください

【食事療法における行動変容】

食事療法における行動変容のグラフ



【食事療法における行動変容】

食事療法における行動変容のグラフ




Q3:生活習慣の変化について聞かせてください

【運動療法における行動変容】

運動療法における行動変容のグラフ



【運動療法における行動変容】

運動療法における行動変容のグラフ

【薬物療法から離脱した1例】

54歳女性、身長153.8cm 体重59.6kg BMI:25.2

平成28年6月にクリニックを受診。以前までは総合病院で食事、運動療法をおこない境界型を推移。HbA1cが少し高く7.3%であったが薬物治療はなく主治医の異動に伴い、自宅に近い糖尿病専門医を受診したところ、HbA1cは6.9%と下がってはいたが、週1回製剤トレラグリプチンの処方開始となる。併用薬はアトルバスチン錠。

【薬物治療と検査数値】

薬物治療と検査数値のグラフ

【体重とHbA1cの推移】

体重とHbA1cの推移のグラフ

【HbA1cの服用前後の変化(~H29.3)】

HbA1cの服用前後の変化のグラフ



考 察①

  • 週1製剤トレラグリプチン服用によるアドヒランスは良好で、9割以上と高かった。

  • 週1回の服用に替える事で半数の方が楽になったと思うことは、薬物治療からの解放感や日々のQOLの改善が行動変容の向上につながっていくと考えられる。

考 察②

  • 症例数は少ないが、1週間持続する薬効作用(DPP-4阻害率)の結果が、服用日の違いによりに差があるように考えられる。

  • 週末に服用するよりは週中に服用することで日々の生活に対する集中力が保たれ血糖管理が維持されるのではないかと思われる。

  • 週1製剤は、ディリー製剤と比べて血糖管理が大きく変化する薬剤ではないが行動変容ステージを把握した上での指導を充実すればより良い改善効果も期待できる薬剤である。

今後の課題

  • 進歩する糖尿病治療の中で、薬物治療を念頭に置きながらも患者への療養指導の充実、後押しをしていく事は重要である。

  • その中で多職種連携(薬剤師、管理栄養士、看護師)などチーム医療として患者を支えていく保険薬局が望まれると思う。

  • 患者の行動変容の位置づけを職種間の統一した認識のもとで療養指導をおこないステージアップできるように取り組んでいきたい。