漢方の歴史と正しい使い方

2021.5. 1 お薬

~漢方とは~

さまざまな生薬の組み合わせによって、その人の体質に適したからだの症状に対応できる漢方薬は、何千年もの歴史があり、治療効果のあるものが今日も医薬品として用いられています。漢方の基本は、"人間の体も自然の一部"という考え方です。"病気ではなく病人をみる"という考えで、体の一部分だけにスポットをあてるのではなく、kanpou.pngまた、体質や生活習慣などから見直し、整えていきます。なお漢方は病名がついていない不調(未病)にもアプローチできるのも大きなポイントです。体全体の状態のバランスを総合的に見直すといった特徴があります。


漢方は日本独自の医学です

漢方は、治療に対する人間のからだの反応を土台に体現化した医学といえます。古代中国に発するこの経験医学が日本に導入されたのは5~6世紀頃。日本の風土・気候や日本人の体質に合わせて独自の発展を遂げ、我が国の伝統医学となりました。17世紀頃、特に大きく発展して体現化され、現在へと継承されています。漢方薬3包.png漢方のいう名称の由来は、日本へ伝来した西洋医学である「蘭方」と区別するためにつけられたものであり、中国の伝統的な医学である「中医学」とは異なる、日本独自の医学なのです。


漢方薬と西洋薬の違い

漢方薬は生薬でできたもので、西洋薬は化学的に合成した成分でできたものですが、漢方薬と西洋薬は、"治し方"に対する考え方が違います。 漢方医学は、体本来のもつはたらきを高めるように作用して、体自身の力で正常な状態に戻そうとするものです。局所的に現れた症状だけを見るのではなく、病気の人全体を見て、心身全体のひずみを治していくという総合治療だと言えます。一方、西洋医学は、症状として起きている現象に対して、局所的に対応するものです。病気を部分的に見ることで、本来体がするべきはたらきを薬が代わりにし、そのはたらきが切れると元の状態に戻ってしまうこともあります。

薬袋と薬.png 病気を診る場合、自覚症状だけでなく、他覚症状や検査数値が重視されます。ただ、漢方薬、西洋薬、どちらが優れているというわけではないので、それぞれの得意分野を組み合わせるかたちで併用することが有効だと考えられています。

漢方薬の効果的な選び方

葉っぱアイコン.png病状に合わせて選ぶ葉っぱアイコン.png

漢方薬は、その人の体質や症状に合っていないと十分に効果を発揮してくれません。薬剤師と相談.jpg漢方では症状だけではなく、一人ひとりの体質に合わせて漢方薬が処方されています。体質や体型、体力、抵抗力、症状の現れ方などを考慮して、最も合っている漢方薬を選ぶことが大切です。 医師、薬剤師または登録販売者に相談してみましょう。

葉っぱアイコン.png体質に合わせて選ぶ葉っぱアイコン.png

漢方は、病気にかかっている人の状態を、体質、病気の状態、環境などを含めたさまざまな角度からとらえ、「証」に基づいて治療します。「証」とは、「病気の人が表すさまざまな症状や訴えのなかから、関連があるものを症候群としてとらえたもの」です。色々な体の男.jpg
「この証には...この漢方薬が最適」という処方があります。そのため、同じ病気でも異なる漢方薬を使うこともありますし、違う病名であっても、病気の原因が共通している場合は、同じ漢方薬を使うこともあります。

漢方薬を飲むときの注意点

study_mondai.png2種類以上の漢方薬を同時に飲んでもよい?

study_kotae.png 漢方薬は何種類かの生薬を特定の比率で組み合わせて作られています。 それぞれ別の漢方薬を混ぜてしまうと、別の薬になってしまいます。そのため、むやみに複数の薬を飲むと成分が重複してしまい副作用が出やすくなったり、思わぬ作用が現れたりするおそれがあります。自己判断で複数の薬を飲まないようにしましょう。


study_mondai.png漢方薬と西洋薬は併用しても大丈夫?

study_kotae.png 西洋薬の成分が漢方薬と重なった場合、とくにカンゾウ、マオウ、ダイオウ、ブシなどが含まれている漢方薬は注意する必要があります。漢方薬に関しては、副作用が少ないと思いがちですで、成分の重なりにはとくに注意しましょう。

漢方薬は基本的に食前または食間に飲む!!

yakuzaishi_man_table.png漢方薬は一般的には、食前(食事の30分~1時間前)、食間(食事と食事の間のことで食後2時間ぐらい)、つまり、胃に食べ物が入っていないときに飲みます。用法・用量の記載を確かめて、その指示に従って飲んでください。