第60回日本糖尿病学会年次学術集会 2017年5月18~20日

2017.5.18 研究発表

「検体測定室における血糖自己測定の啓発活動の取り組み
~保険薬局として予防医療への管理栄養士の介入~」yakuken191.jpg

日程 :2017年5月18日・20日
場所:名古屋国際会議場
研究者:まつもと薬局栄養部
    川村玲加・大西玲衣・東郷哲史・一色恵
    まつもと薬局自由が丘店:
    田中啓介・鈴木実紀・刀禰谷雅之・松本健春
    自由が丘山田内科クリニック:山田 大志郎

はじめに

  • 隣接する糖尿病専門医から、20~30代妊娠糖尿病患者に対する栄養相談依頼の増加傾向より、若い年齢層に着目し、予防医療を考えた薬局を目指す取り組みを始めた。
  • 隣接する耳鼻科を受診する子供の母親や来局された方を対象に、健康意識についてアンケート調査を行い、現状の把握を試みた。
  • アンケートの結果より、今後の対策、課題を考察した。

実施概要

① 実施期間  平成28年5月~平成28年10月
② 調査対象  20代~60代の女性 100名
       (20代10名、30代42名、40代35名、50代9名、60代4名)
③ 調査方法  アンケート調査

【アンケート内容】

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このアンケート用紙を基に、ランダムに声をかけて、ご協力頂いた。

アンケート結果①

過去一年以内に健康診断/血液検査は受けましたか。

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過去一年以内に健康診断を受けている方の割合は、50代が89%と最も多く、30代が57%と最も低かった。
※ 健康診断を受けている方の内訳

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アンケート結果②

血糖値やHbA1cという言葉を聞いた事がありますか

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アンケート結果③

健康に対して、気をつけている事はありますか

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健康に対して気を付けている方の割合は、50代78%と最も多く、20代10%と最も低かった。

気を付けている事がある方何に気をつけていますか?

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アンケート結果④


ご家族に糖尿病の方はいますか

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アンケート結果⑤


血糖測定を行ってみませんか。※薬剤師指導のもと

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測定者のうち、過去一年以内に健康診断を受けていない方の割合は71%だった。
測定者のうち10名の方が基準値を上回る結果となった。

【測定結果】   ※基準値を上回った方

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アンケート結果のまとめ

若年層は健康診断を受けていない方が多かった。平成26年の厚生労働省による国民健康、栄養調査の結果でも、過去1年以内に健康診断、健康診査及び人間ドックを受診していない女性の割合は、30代で最も高い。全国的に見ても健康診断を受ける機会が少ない。

健康に対し気を付けている事は、食事内容が一番多かった。正しい食の知識の普及が、健康的な生活をサポートする事に繋がると感じた。


測定者33名中10名が基準値を超えた。
測定に至らなかった方にも、基準値を超える方がいる可能性がある。
今後は、測定に至らなかった方へのアプローチも重要だと感じた。

まつもと薬局の具体的な取り組み①

【2回目以降の測定に至った3症例】
薬剤師より声掛けを行った結果、3名が2回目の測定に繋がった。
その他、2名が健康診断を受ける意思を固めた。


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※ ③の方には、2回目測定後薬剤師より受診勧奨

まつもと薬局の具体的な取り組み②

【栄養指導を行った1症例】
症  例 : 30代 女性
主  訴 : 高血糖
現病歴 : 平成28年11月、第二子妊娠中期に産婦人科で血糖値が高値を示したため、内科を受診。
75g糖負荷試験を行った結果、空腹時血糖51mg/dl、1時間血糖189mg/dl、2時間血糖104mg/dl、1時間値が基準値を上回った。また空腹時には低血糖がみられた。HbA1cは5.4%だった。


医師より栄養相談依頼があり、後日、まつもと薬局管理栄養士が栄養相談を行った。

「栄養相談前の食事内容例」

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「栄養相談後の食事内容例」

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栄養指導を行った症例のまとめ

栄養相談前に、インターネットで基本知識をつけていたため、誤解もあったが、説明に対する理解度が早かった。
栄養相談後も、食事記録アプリ等を駆使して食事管理を続けてくれた。
この症例から、若い世代の生活に合わせた栄養相談をしていくうえで、
食事記録アプリ等の活用を勧める事も1つだと感じた。
若年層の栄養相談は、動機付けが出来れば、
インターネットで情報収集をする等、行動に移るまでの時間が早い。

今後の課題

アンケートから、若年層は健康診断を受けている割合、健康を意識している方の割合が少ない。
若年層の健康意識向上に管理栄養士がどのように介入していくかが課題である。
アンケートから、健康は食事から改善するイメージが強い。
管理栄養士のアプローチが、健康サポート薬局としての機能を担う。
SMBGで基準値を超えていた方の、その後の経過を追跡していくのは、来局がない場合難しい。
継続的に関わっていくためにも、処方=薬局というイメージを払拭し、気軽に立ち寄れる場所である事を定着させる必要がある。

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