日本腎臓病薬物療法学会学術集会 2016年11月19~20日

2016.11.19 研究発表

「高齢者におけるNSAIDs 定期服用患者の腎機能調査」yakuken17.jpg

日程:2016年11月19日~20日
場所:パシフィコ横浜アネックスホール
研究者:まつもと薬局 本店
    大野伴和、藤原舞子、浅野逸郎、遠藤泰明、鈴木希、松本健春

yakuken17b.png高齢者では腎機能が低下していることが多く、非ステロイド性抗炎症薬(以下、NSAIDs)はさらに腎機能を低下させるリスクが高いため、長期間の使用や常用は避け、使用する場合は低用量とすることが望ましいとされています。  

 また、過去の薬物性腎障害の実態調査でも、60歳以上が薬物性腎障害の過半数を占めており、原因薬剤としては、抗生物質、NSAIDs、造影剤などが多いとされています。
 そのため今回、高齢者におけるNSAIDs 定期服用患者の腎機能に関する実態調査を行うとともに、薬剤性腎障害の副作用の認知度の確認を行いました。

yakuken17c.png

対象は65歳以上の高齢者でNSAIDSを定期内服している方としました。
アンケート内容としては
Q1 腎機能検査値がわかるか?
Q2 自覚症状の有無 
Q3 服用理由を知っているかと服用期間 
Q4 服用方法についての医師の指示の有無 
Q5 痛み止めの副作用を知っているか? の5点としています。

yakuken17d.png

齢層は様々で、性別は今回の調査では女性が多い結果となっています。

yakuken17e.png

使用薬剤としては、病院の処方傾向からセレコキシブが最も多くなっています。
湿布剤を併用していない方も全体の半数程度いました。

yakuken17f.png

診療科としては、整形外科の割合が最も多かった。

yakuken17h.png

腎機能検査値がわかるか?の問いに対しては、
採血データがないため検査数値が聞き取れない方が8割と大半を占めていた。

yakuken17h.png

腎機能検査数値が聞き取れた方8名のうち、補正eGFRが70未満の方は6名いた。
高齢で筋肉量も少ない方が多いため、補正eGFR70未満でピックアップしています。

yakuken17i.png

補正eGFRが60未満の症例として2つ挙げました。

1つ目は、75歳女性でリウマチのためNSAIDSを服用している患者さんになります。
腎機能低下はあるものの、直近のSCrの低下もなく、胃腸障害、むくみといった自覚症状もみられず、
原疾患がリウマチということもあり、経過観察としていた患者になります。
現在も検査数値は横ばいで経過しています。

yakuken17k.png

2つ目は、75歳男性で、足腰の痛みでNSAIDSを服用している患者になります。
腎機能低下はあるものの頓服での使用であったこともあり経過観察としていた患者になります。
自覚症状は特に認められなかったものの、
その後検査値の悪化などもみられ、アセトアミノフェン、トラマドール製剤へ変更となっています。

yakuken17l.png

腎機能検査数値が聞き取れなかった方33名中、他病院の受診があった方は26名(79%)おり、
そのうち内科系の受診があった方は22名(67%)と多くみられた。
他病院の内科系の診療科では採血データがあるため、
聞き取りを行いお薬手帳等に検査値を記載してもらえれば、
採血のない診療科の薬が処方された場合でも検査数値がわかるため、
CKD患者の腎機能低下を防げる可能性があります。

yakuken17m.png自覚症状の有無についての設問に対しては、あると答えた方は、
14名(34%)おり、実際に腎機能検査数値が聞き取れたのは1名のみでした。

yakuken17n.png

服用理由を知っているかの問いに対しては、大半の方がわかると回答していました。

yakuken17o.png

服用期間は、1~5年未満という方が23名と最も多くなりました。

yakuken17p.png

服用方法についての医師の指示についての設問では、
指示がある方は3割程度と少なく、漫然と服用しているケースが多かった。

yakuken17q.png

痛み止めの副作用を知っているか?の設問に対しては、

両方知っているという方はほとんどおらず、
腎臓に負担をかける薬だと認識している方は全体の7%とかなり少なかった。

yakuken17r.png

整形外科では採血がなく、腎機能検査値が聞き取れない方が多かったが、
自覚症状を訴える方もいたため、今後、お薬手帳の活用等による検査値の把握の必要性を感じました。

服用理由は知っているが、
医師と痛み止めの服用方法について話をするケースが少ない(漫然と服用しているケースが多い)ため、
服用方法を再度確認し、痛みに応じた服用方法を選択してもらう必要性を感じました。
痛み止めの副作用として、腎障害について知っている方は7%とかなり少なく、
処方の際には胃腸障害とあわせて伝えていく必要性を感じました。

yakuken17s.png