第8回日本腎臓病薬物療法学会 2014年10月12~13日

2014.10.12 研究発表


「CKD患者、透析患者の睡眠状況についての調査」

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日程:2014年10月12日・13日
場所:大阪国際交流センター
研究者:(株)まつもと薬局 
    大野伴和、田中啓介、藤原舞子、遠藤泰明、松本健春



目的

睡眠障害の要因としては様々なものが考えられるが、二次性レストレスレッグス症候群(以下、RLS)もその一つとして挙げられる。RLSは、貧血、妊娠、透析、慢性腎臓病(以下、CKD)、糖尿病、リウマチなどの患者に比較的多く認められる合併症とされており、その異常感覚は夜間に生じることが多いため、二次的に睡眠障害を生じさせることがある。
今回CKD患者・透析患者の睡眠状態についての調査を行うとともに、RLS症状の有無についても聞き取りを行ったので報告する。

方法

睡眠状態に関するアンケート調査
アンケート実施数:21名
対象:CKD患者(7名)・透析患者(14名)
男性14名、女性7名
年齢 68.3歳(48~87歳)
診療科:透析14名、循環器5名・泌尿器科2名

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結果

Q1、夜はよく眠れていますか?

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8割程度の方が眠れていると回答。

【眠剤の有無と睡眠状態の関係】

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Q2) 現在の眠剤で満足していますか?

眠剤を服用していた方5名(24%)

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満足していないと回答した方は、グッドミン錠0.25mgを服用。

Q3)体のかゆみはありますか?

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かゆみに関しては、透析患者で多くみられた。

【体のかゆみと睡眠状態の関係】

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かゆみがあっても、なくても眠れていると回答している方が多かった。

Q4)RLSの症状はありますか?

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RLS症状を呈する患者は全体の26%となり、文献報告の割合とほぼ一致していた。

【慢性腎不全の患者におけるRLSの有病率の調査】(文献報告から)

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【RLSの症状発現内訳】(6名の回答数)

  • 腕や足に不快な感覚がおこり、腕や足を動かしたくてたまらなくなる➡5
  • 安静にして、横になったり座ったりしているとあらわれる・強くなる➡2
  • 脚を動かすと、不快な感覚が軽減する➡1
  • 夕方から夜にかけて強くなる➡0

6名中5名が透析患者で、残り1名が泌尿器科受診中のCKD患者であった。

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パンフレットの症状が記載された部分もみせながら説明した。

【RLSで使用される薬剤】中等度から高度の特発性レストレスレッグス症候群)

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【RLSで使用される薬剤】(中等度から高度の特発性レストレスレッグス症候群)

  • レグナイト錠は腎排泄型の薬剤であり、高度の腎不全患者(Ccr30mL/min未満)、透析患者では禁忌とされている。
  • ビ・シフロール錠のRLSの用法用量は、パーキンソン病のそれよりも低く設定されている。そのため、安全性は確立していないものの、腎不全患者、透析患者においては慎重に投与できる薬剤となっている。
  • ニュープロパッチは、肝代謝型の薬剤であるため、腎不全患者、透析患者においても減量の必要はないとされている。

Q5 、貧血はありますか?

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【RLS症状の有無と貧血】

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今回のアンケートでは、貧血ありでもRLS症状が認められない患者が多かったが、貧血なしの場合と比較するとややRLS症状は多くみられた。RLS症状と睡眠状態の関係

【RLS症状と睡眠状態の関係】

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RLS症状ありと回答した方でも、半数は眠れていると回答した。

まとめ

  • 全体の76%と多くの方がよく眠れていると回答し、眠剤を服用している患者の割合(23%)も比較的少なかった。
  • 体のかゆみがあるとの回答は透析患者で多くみられたが、大半が眠れていると回答しており、かゆみと睡眠状態の関連性はあまり感じられなかった。
  • RLS症状ありと回答した方は6名と26%の患者がおり、文献報告の内容とほぼ一致した。眠れていないと回答した方の半数以上にRLS症状が認められた。
  • RLS症状ありと回答した方には、パンフレット等を用いてRLSの紹介とともに、薬による治療が可能であることを伝え、医師へ相談するように促したが、その後医師への相談まで至ったケースはなかった。
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考察

  • RLS症状について医師への相談まで至ったケースはなかったが、潜在的な患者を発掘し病気の紹介をすることはできた。 CKD患者、透析患者においては引き続き調査を行っていき、潜在的な患者の受診勧奨に努めたい。
  • 今後は、患者へ医師への相談を促す方法についても検討していく必要性を感じた。
  • RLS症状ありと回答した方のうち、半数は眠れていると回答しており、症状の聞き取り方法についても工夫が必要と考えられた。